審美歯科

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歯周病菌と腸内細菌

今回は一月に掲載されていた記事の再掲載です。

 

 

 

 

 

先日、池上彰さんの番組で、「腸内細菌」について取り上げられていましたね。
個人的に、なのですが、最近、「腸内細菌」という言葉をよく見かけておりました。

科学雑誌「ニュートン」にも腸内細菌と喘息との関連を示唆する記事がありましたし、インターネットニュースでも腸内細菌と発達障害の関連についてに記事がありました。

また、腸内細菌と糖尿病との関係についてはこれまでに広く認知されてきたと思われます。

そして歯科の業界誌である「歯界展望」の2016年1月号に、歯周病菌と腸内細菌との関わりに関する記事が掲載されていました。これは偶然か?

 

その記事の内容ですが、新潟大学の山崎和久先生の執筆のもの。新潟大学と言えば2,3年ほど前、歯周病菌と腸内細菌との関連を示す研究結果が読売新聞に掲載されていました。

記事の内容ですが、一部だけをお話ししますと、マウスの口腔に歯周病の主要な原因菌である「P.gingivalis」を投与したのちにグルコース負荷試験とインスリン負荷試験(どちらも糖尿病を判定する検査)を行い、その上で回腸内容物に含まれる細菌叢(細菌の集団)を解析し、糖代謝、炎症と腸内細菌の関係を明らかにしようと試みたとのこと。

その結果、「P.gingivalis」菌の投与により、耐糖能異常(「糖尿病予備軍」と言える状態)とインスリン抵抗性(糖を代謝する(血糖値を下げる)酵素であるインスリンが正常に働かなくなった状態)が誘導され、同時に脂肪組織では炎症に伴うインスリン抵抗性関連遺伝子の発現が上昇、インスリン感受性関連遺伝子の発現低下が認められた、とのこと。
つまり、血液中では血糖値を下げる重要な酵素であるインスリンが機能しなくなって血糖値が上昇し、脂肪組織などはインスリンの効力が効かなくなるような性質に変化し、まあインスリンを受け取る機能も低下してしまった、とのこと。

脂肪組織などで炎症が起こるとインスリン抵抗性が誘導される性質があるのですが、今回の結果は「P.gingivalis」菌の投与によって脂肪組織や肝臓の組織でも炎症が起こり、そのためにインスリンを無効にする働きの増した、と言えるとのこと。関連した反応として、肝臓では炎症の際に脂肪滴の蓄積が認められたとのこと。

このときの腸内細菌叢を調べたところ、「バクテロイデス門」の比率が増加していた、とのこと。「P.fgingivalis」菌は分類上、この群に含まれるとのことですが、「P.gingivalis」菌自体は解析の結果、腸管内に定着あるいは増殖してはいなかった、とのこと。
この結果から、バクテロイデス門が増加した、という事実は、腸の外部から侵入してきた細菌が腸管内に住み始めたからではなく、もともと腸管内に住んでいた細菌たちの中の変化である、ということが分かったそうです。

つまり「P.gingivalis」菌自体が腸管内に住みついて悪さをしたのではなく、「P.gingivalis」菌が腸管内にもともといた細菌に作用して、インスリンを無効にする力を持つ細菌を増やした、と言えます。
また、「P.gingivalis」菌の「悪い影響」はこれだけにとどまらず、腸管バリア機能にて重要な役割を演じている「タイト結合タンパク」の遺伝子発現の低下、炎症性サイトカイン遺伝子の発現上昇とも関連していた、とのこと。

腸管の内部はたくさんの「腸内細菌」もいるし、消化のための強力な消化液もあるため、それらが体内に侵入してこないように、厳重な防御壁で守られています。その根本的な仕組みである組織と組織を結びつける結合は非常に強力で密接。その結びつけるタンパク質が作られなくなっている状況となり、また糖の代謝以外にも様々な影響を引き起こす「炎症」を悪化させる物質をどんどん発生させてしまう、とのこと。

さらに「P.gingivaris」菌の悪行は続きます。次は「小腸型アルカリフォスファターゼ」遺伝子の発現も抑制した、とのこと。
「アルカリフォスファターゼ」は、広く全身に分布する酵素で、ある臓器の破壊や壊死が起こった後の段階である修復の過程において合成が促進されます。「治癒」に必要な酵素と言えると思います。
論文中では「小腸型アルカリフォスファターゼ遺伝子を欠損させたマウスでは血中内毒素レベルが上昇し、ヒトの非アルコール性脂肪肝疾患と類似した病態を示すことが知られている」とあります。

血中内毒素とは字の通りで「血液の中の毒素」のこと。「非アルコール性脂肪肝疾患」ですが、アルコールを飲みすぎると肝臓での代謝が追い付かなくなって肝臓の中に脂肪が蓄積されて「アルコール性脂肪肝」となり、それが肝臓に害を与えて最終的には肝炎に移行してしまいます。
「非アルコール性」の場合、原因にアルコールが含まれないのにアルコール性脂肪肝のように肝臓の中に脂肪がたまってしまう状態。インスリンの放出などの他、多くの肝臓の機能を弱めていってしまいます。

以上の事から、「P.gingivalis菌」は、腸内細菌が悪い性質になるように間接的に作用し、直接には炎症を激化させ、肝臓などの重要な臓器の機能を弱めていく働きをしている、と言えます。

これは他の文献にあったのですが、「P.gingivalis菌」は、潜伏期にある「エイズウイルス」を発症させる役割があることが示唆されているとのこと。つまり、「P.gingivalis菌」がエイズウイルスを活性化する「スイッチ」を推しているのではないか、と。

 

これまで「P.gingivalis菌」について勉強をしてまいりましたが、この菌、非常に広い範囲で悪さに関与している、と実感させられます。

今や皆さんもご存知の「O-157」などの大腸菌やノロウイルスなども重大な症状を発生させますが、「P.gingivalis菌」は色んな場面で登場するのです。「O-157」やノロウイルスのように「主役」を演じるのではなく、姿をはっきり見せない「黒幕」として、様々に関与しているようで、むしろ学生時代以上に不気味さを感じています。

その「P.gingivalis菌」の主要な「舞台」が口腔内。

人体には「口腔」以外にも細菌が生息している場所があります。しかし「お口」というのは、外の世界と人体内の「内部の世界」との結節点。すなわち外部からの侵入を試みる細菌にとって、最も無防備な場所、と言えます。人体侵入を阻止する第一関門。そして人体内部に様々な悪い影響を与える「P.gingivalis菌」を直接攻撃できる最後の場。

昨年の11月に福岡から今井一彰先生をお招きしましたが、先生は「口呼吸」を撲滅させたい、とおっしゃっておりました。そのために「あいうべ体操」を考案した、とのこと。

ここで強調しておきたいのは今井先生は「あいうべ体操」を普及させたいのではなく、あくまでも「口呼吸を失くすこと」ことが真意、ということ。

今井先生は、口呼吸が無くなるのであれば別に「あいうべ体操」でなくても構わない、と明言しておられました。
もっとも簡単で、長続きできそうな方法は何か、と考えた結果、「あいうべ体操」に行き着いただけだ、とのこと。

そして「口呼吸を失くす」という目標に異論のある先生は少ないと思われます。

 

さらに愛媛の糖尿病専門医である西田亙先生も、糖尿病の予防に歯周病予防が大変有効である、とお話しされておられました。

今年、口腔と全身疾患との関連がさらに注目される年になると思われます。

 

 

 

余談

ここからは余談ですが、腸内細菌を良い意味で活性化するのにヨーグルトや乳製品が勧められますね。

で、実は牛乳やヨーグルトは「むし歯」を発生させないことで知られています。ある大家の先生にお聞きする機会があったんですが、その仕組みは「よく分かっていない」とのことでした。

でも、口腔内細菌と腸内細菌のかかわりを考えると、もしかしたらヨーグルトなどで活性化された腸内細菌の方が口腔内の細菌に「良い影響」を与えているのかもしれませんね。

なお、乳製品の中には糖分が含まれているものもあるので、乳製品を口にした後もそのままにしないことをお勧めします。

余談ついでですが、牛乳で虫歯にならないのに母乳で虫歯になりやすいのはなんで?と思われるかもしれません。これについて、数か月前の「ナショナルジオグラフィック」に面白い記事が掲載されていました。
その記事では「赤ちゃんに喜ばれるため、赤ちゃんの気を引くため、母乳には糖分が含まれている」とのこと。そしてこの時期まで糖分には鎮痛作用もある、とのこと。
なので授乳した後、そのまま寝てしまうと虫歯になりやすいので注意してください。

また発売中の別冊「ニュートン」では、細菌の特集が組まれていますが(というか、一冊まるごと細菌特集)、この記事の中でも「人体は細菌からの防御のために周辺環境を酸性に保っている」とあります。

つまり酸性の環境では細菌も死んでしまう。フッ素の虫歯予防の作用の一つでもあります。

一方で、ミュータンス菌などはアルカリ性で数が減ることが知られています。

でも、全体の細菌を考えると、酸性環境下の方が「抗菌作用」が認められる。

なので重曹うがいによる「Ph値の回復することでの虫歯予防」は、特定の細菌への効果は認められるものの、様々な細菌が共同生活を営む細菌叢を見ると、必ずしも全て有効とは言えない、と思われます。

 

以上、長々と失礼しました。