審美歯科

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細胞乗っ取り作戦 ピロリ菌 その2

いよいよピロリ菌が細胞を「乗っ取る」方法に入っていきます。

そしてこの方法での感染が、ピロリ菌の癌化に関与している、とも言われています。

 

 

ピロリ菌の「乗っ取り」の方法は、「4型分泌装置(T4SS)」という装置によって行われます。

この4型分泌装置の細かい構造などを図示しようと思ったのですが、なかなかイメージのつかめる画像を見つけることができませんでした。実際、まだ不明の点も多い、とのこと。

でも、3型分泌装置の構造に似ている、とのことです。

 

 

 

IMG_0164 IMG_0163

これが3型分泌装置。

この構造に似ているそうです。

ただ、違う点は、3型分泌装置よりもサイズがかなり大きい、ということ。

サイズが大きい分、中の「トンネル」も広くなり、3型分泌装置では「エフェクター」と呼ばれる、比較的サイズの小さい「悪い物質」しか注入できなかったのですが、4型分泌装置ではトンネルも広くなった分、遺伝子や遺伝子にタンパク質が結合している複合体など、より大きな物質も注入することが可能。

 

この4型分泌装置には、いくつかの種類があるそうです。

1つは、宿主ではなく細菌同士が「ドッキング」するのに専念するもの。
この装置により、細菌同士が「接合」して、交流が行われます。細菌同士の「交流」とは、ずばり「遺伝子のやり取り」です。

人など、有性生殖をおこなう生物の多くは、他人同士の父、母の遺伝子の交配によって、違う種類の遺伝子が合わさり、強化されていきます。自分に足りない部分の遺伝子が、他人である異性の遺伝子と合わさることで強化されます。しかし、同じ一族内での遺伝子の交配が繰り返されると、遺伝子の強化が行われず、弱いままになってしまいます。

鎌倉時代の北条氏が例に挙げられます。

策士と名高い北条時頼、名将と名高い北条時宗、そのほか北条得宗家の執権に就いた人物は軒並み短命に終わっています。また、死に至るまでに病床につくことを繰り返していた点等から、一族内での近親婚が繰り返された結果、免疫能力が弱くなっていたのではないか、と指摘されています。

 

話を細菌に戻すと、細菌は有性生殖ができません。細菌自身が分裂することで増殖していきます。しかしそれでは「遺伝子の強化」がなされません。

そこで「接合」という交流を行う事で、細菌同士が遺伝子のやり取りを行い、自らの遺伝子を強化していきます。

この遺伝子の直接のやり取りにより、細菌の「進化」は非常に早く、数年で新しいタイプの遺伝子をもった細菌が登場します。

これが顕著に見られるのが薬剤への耐性の獲得です。

新しい抗生物質が登場すると、細菌は全滅に近い状態となります。しかし細菌同士がその菌の種族を超えて接合を繰り返して自らの遺伝子を強化することで、短期間で「新薬」に対する耐性を獲得してしまいます。

細菌こそ、最も「進化」の活発な生物と言えます。

一つ目の種類の説明は以上。

 

次なる4型分泌装置の種類は、細菌同士が接合しないまま、周囲の環境から外来性の遺伝子を取り込む、もしくは放出するもの、とのこと。すいません、いまいちイメージがつかめなかったのですが、細胞同士が直接くっつかなくても、周囲に漂う外来性の遺伝子を取り込む、もしくは放出する、ということが行われるらしく、その取り込むとき、放出するときに4型分泌装置が使用されるそうです。

 

 

そして3つ目が、宿主細胞への侵入路として働く種類です。

細菌同士の接合は、比較的、簡単に行うことができますが、動物細胞や植物細胞といった、全く種類の異なる生物への侵入は、接合のように「友好的」には行われません。

やはりO-157の時のような強引な突入方法が必要となります。

侵入方法もO-157の際に御紹介した方法と同じく細胞に針を刺す形で行われます。

ここで注入される「エフェクター」の中でもピロリ菌に特有のものが「CagA」と呼ばれるタンパク質です。

胃の細胞内に侵入したCagAは、細胞内でリン酸化され、細胞内にある成長因子(特定の細胞の分化や増殖を促進するタンパク質)のシグナル伝達(ざっくり言うと、細胞内での情報交換や命令の伝達のこと)を活発化させます。

これにより、胃の粘膜上皮細胞同士を結び付けていた接着が緩み、細胞の増殖と運動が活発となります。こうして細胞がプログラムされている生態を離れ、勝手気ままに増殖を開始することで、癌化が始まる、とされています。
さらにピロリ菌は、4型分泌装置によって(?少しニュアンスが異なるかもしれません)、宿主細胞の転写活性因子(転写「DNAの遺伝情報をRNAに写す過程」を活発化させる因子)を活性化することで、IL-8(免疫細胞から放出される物質)などの炎症性サイトカイン(炎症を起こす、または拡大させる物質)が作られるのを促します。
炎症が引き起こされることで、胃炎などの炎症症状がより重くなっていきます。

 

 

4型分泌装置の実体はまだ明らかにされていない部分が多い、とのこと。

 

 

これがピロリ菌の細胞への侵入方法。

 

ここまでは宿主に強引に突入する細菌たちでしたが、次は少し異なってきます。続く