審美歯科

診療案内

診療科目:
歯科・小児歯科
診療時間:
月・火・木・金
9:30〜19:30
土・日
9:30〜18:00
休診日:
水曜・祝日
お電話:
011-669-8211
所在地:
札幌市西区西野5条3丁目7-1
[map]

細胞乗っ取り作戦 レジオネラ菌

1976年、アメリカ・フィラデルフィアのホテルにて、7月21日から24日にかけてペンシルバニア州地区の退役軍人による大会が開催された。

その大会期間中から、異常事態が発生した。

大会出席者や関係者が発熱と倦怠感、咳、痰などを発症し始めたのだ。

おなじ症状を発症するものは瞬く間に増え、大会終了直後の25日から27日にかけてピークを迎えた。発症者は、当初は発熱、倦怠感などを訴えていたが、急速に症状は進行し、呼吸困難となる者もいた。

懸命な治療が施されたものの容態に変わりはなく、抗生物質も効果を示さなかった。

この原因不明の重症肺炎は8月初旬まで、ホテル利用者を中心に不気味な広がりを見せた。34名の死亡例も発生した。

後の調査により、発症者は7月1日~8月18日の間にこのホテルに立ち入った者であること、とされ、182例が条件に合致した。この182例の内、149例が退役軍人大会の出席者であり、9例は他の会合でホテルを利用した者だった。また、39例はホテル内にはいなかったが、この期間内に「グラウンドゼロ」であるホテルから、1ブロック以内にいたことがわかった。これはホテル内にはいなかったものの、ホテルの外に立ってパレードを見物していた者が主だった。

また全症例の78%が男性で、そのほとんどが50歳以上であった。ヒトからヒトへの伝搬は認められなかった。

以上の事からホテルのロビーかすぐ近くの外で、空気伝搬する病原体によって呼吸器感染した可能性が高いことが指摘され、調査が進められた。その結果、退役軍人大会の会場近くの建物にあった冷却塔から、発症者と同じ「細菌」が検出され、この冷却塔から放出された「エアロゾル」(霧状のもの。加湿器の「モクモク」の状態)内によってこの原因菌がばらまかれ、感染を引き起こしたとされている。

そしてこの時、原因菌の究明も行われた。当初はリケッチアなどが疑われたが、原因と同定された細菌は、全く未知のものだった。

こうして新種の細菌、レジオネラ菌(Legionella pneumophila)の存在が、初めて確認された。

 

 

以上のように「在郷軍人病」として有名なレジオネラ症の原因菌は、ごく最近、発見されました。

レジオネラ菌は上記のように「エアロゾル」によって拡散するため、エアコンや加湿器が普及した現在でも毎年、感染者が多発し、特に入浴の習慣が根付いている日本ではその危険性が高く、毎年数人の方がレジオネラ症によって死亡しています。

ピロリ菌やチフス菌が、衛生環境の改善とともに減少していったのとは逆に、レジオネラ菌はエアコンなどの普及によって、感染の確立を高めている、と言えます。かくして人類と細菌との戦いは永遠に続いていくわけです。

 

レジオネラ菌は、川や沼、土壌中などの自然環境に存在する常在菌の一種。

エアロゾルの形で人に吸入されると、肺胞にたどり着きます。

そして肺胞に存在するマクロファージに食べられてしまうのですが、レジオネラ菌はマクロファージの体内から、「太い針」である4型分泌装置を差し込んで80種類ものエフェクター(悪い成分)を注入します。そしてサルモネラ菌のところでお話しした方法でマクロファージの中を安全な環境に変えてしまいます。この点はサルモネラ菌に類似しています。

 

さて、このレジオネラ菌ですが、生息する場所をヒトにまで広げたのは、上述のようにごく最近のことです。それまで水の中や土壌中に生息していたレジオネラ菌は人体の免疫細胞との戦いでは、ピロリ菌やチフス菌のように「ベテラン」ではありません。

レジオネラ菌の攻撃兵器は主に、土壌中に存在するアメーバに対抗するためのものでした。

細菌は、人体以外でも熾烈な生存競争を繰り広げています。ビルの谷間の空き地や河川敷など、何の変哲もない風景の中でも細菌とそれを捕食しようとする、もしくは蹴落とそうとする他の微生物との戦いが行われています。

レジオネラ菌は、人を攻撃する兵器を持たなかったものの、自分を捕食して来ようとするアメーバに対する兵器は持っていました。

レジオネラ菌はアメーバに捕食されると、上記のように4型分泌装置を使って悪い成分を注入し、アメーバを「乗っ取る」ことで生き延び、増殖してきました。

肺胞に侵入してきたレジオネラ菌を「捕食した」マクロファージは、レジオネラ菌にとってはまさにアメーバそのもの。

マクロファージの「侵入者」への攻撃方法がアメーバと同じであったために、レジオネラ菌は「いつも通り」の攻撃を仕掛けたのでした。

もし、マクロファージの攻撃方法とアメーバのレジオネラ菌に対する攻撃が、同じでは無かったら、レジオネラ菌は人類の敵にはならなかったのかもしれません。

 

細菌は好き勝手に人体に悪さをしているのではなく、自身の種族の生き残りをかけて人体を含めた他の微生物と戦っています。

 

事実、多くの細菌は、後に反撃体制を整えた免疫細胞たちに敗れていくことになります。

 

 

以上がレジオネラ菌でした。