審美歯科

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細胞乗っ取り作戦 赤痢菌 その3

白血球から脱出した赤痢菌。フリーの状態となって移動を開始します。

 

 

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そして腸管上皮細胞の「裏側」である「基底膜側」に行き着きます。

この基底膜側の構造は、常に酸の海に曝されている腸管上皮側(微絨毛のある側)の頑丈構造と異なっています。

そして「裏口」である基底膜側から細胞に近付いた赤痢菌は、3型分泌装置を用いて細胞にエフェクターを注入。このエフェクターにより、細胞はサルモネラ菌のところでご説明したように、「エンドサイトーシス」を行って赤痢菌を取り込んでしまいます。

さて、取り込まれたものの、赤痢菌は、「膜」に囲まれています。水中の気泡の中にいる状態で、水そのものの中にいるわけではありません。そしてこの膜の中にいたままでは、やがて細胞内にある消化酵素によって溶かされてしまいます。

そこで赤痢菌は、消化酵素が分泌される前にこの「膜」から脱出し、細胞質の中に直接、もぐりこんでしまうのです!

こうして細胞内に入り込んだ赤痢菌。人体で言えば、筋肉の中を自由に移動する、といった具合でしょうか?

さて、細胞内にも「オートファジー」という、独自の防衛機能がありますが、赤痢菌はそれも無力化してしまいます。つまり「無敵」の状態となってしまった!!

そして、赤痢菌は細胞内で、自由に移動を始めます。

 

しかし赤痢菌は、細菌の移動に欠かせない「鞭毛」を持っていません。では、どのようにして移動するのか?

 

 

 

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赤痢菌はエフェクターを放出して、細胞内の「骨」であるアクチンを移動させ、これを足場に移動するのです。上図のように、アクチンが、赤痢菌の「踏み台」となるべく次々と集合してきます。そうして「踏み台」であるアクチンが並んだ様は、一筋の線として確認されます。これを「アクチンロケット」と言うそうです。

赤痢菌は、自分自身は何も持っていないのに、その場にあるものを利用して移動します。

そして細胞質の中で悠々と増殖を開始。

 

さらには隣りの細胞にも移動し、増殖していくのです。

こうして赤痢菌は、免疫細胞の目に触れることなく、細胞質の中で生活し続けるのです。

 

しかし赤痢菌のいる細胞は「上皮細胞」です。

上皮細胞は常に内部の細胞と入れ替わっています。上皮細胞は一定期間たつと古くなり、内部から作られる新しい細胞と置き換わります。

皮膚をこすると「垢」が出てきますが、これは古い角質がはがれおちたもの。角質は、常に内部で生成される新しい角質と置き換わり、古い角質は赤として排出されます。これが人体の「外部」と接触しているところでは起こっています。口腔内でも起こっています。

なので、赤痢菌が安全な細胞質に逃げ込んだ、といっても、一定期間が立つと、潜入している上皮細胞は内側の細胞と置き換わってしまいます(ターンオーバー)。

そこで赤痢菌はエフェクターを放出し、なんと細胞の持つ「細胞周期」を操って、自分の居座る上皮細胞の「寿命」を伸ばしてしまうのです!!

もう、完全な「乗っ取り屋」ですね。

 

さて、以下の記述は、いくつかの文献に記載されていたのですが、侵入経路のどの部分であるか、判然としませんでした。おそらくはM細胞から白血球に手渡されるところかと思います。一応、記載しておきます。

細菌や侵入者に感染された細胞は、通常、自らが「感染された!」と緊急信号を発信します。

すると白血球などの免疫細胞がやってきて、感染された細胞ごと、駆除してしまいます。

そこで赤痢菌は、エフェクターを放出して、この信号が発信されるのを防いでしまいます。

しかしすべての信号を遮断せず、免疫細胞の一種である樹状細胞を呼び寄せる信号だけは、妨害せずに発信させます。

そしてこの樹状細胞に乗り込んで、トロイの木馬のように腸管上皮細胞を通り抜けます。

このとき、上皮細胞が大きく破壊されて赤痢に特徴的な下痢が発生する、とのこと。

 

 

 

以上が赤痢菌の「乗っ取り作戦」。

 

細胞周期やアポトーシスまで駆使するとは。

細菌を理解するためには、細菌だけを勉強するのではなく、生物学自体を知っておく必要があります。

 

高校の生物は、その入り口!!