審美歯科

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「糖」について その8 スクロースと虫歯について ③

ここまで、ミュータンス菌をはじめとする口腔内の細菌たちが歯や互いの細菌同士くっつき、糖を分解して酸を作り出すのか、についてお話ししてきました。

 

プラーク細菌の代謝によって生じた各種の「酸」は、プラークもしくはバイオフィルムの内部に溜まってきますので、バイオフィルムの内部のPhは、当然ながら「酸性」(中性がPh7。Ph7より低いと酸性、高いとアルカリ性)の環境になっていきます。

酸性環境になってPh値が下がっていき、歯の主成分である「ハイドロキシアパタイト」の臨界Phを下回るとエナメル質が脱灰(溶け出すこと)し始めます。

ただ、皮肉なことに、この「酸性過ぎる環境」は、細菌にとっても悪い環境となってしまうのです。

低Ph環境(酸性の環境)は、細菌の内部を酸性化させ、細菌の体内で行われる代謝などの機能をも傷害し、やがて細菌に「酸性死」をもたらします。

自分で作り出した「酸」によって、自分の生存が危うくなる、なんて皮肉な話ではありますが、人間の場合でも、少し嫌な想像になってしまいますが、部屋の中に自分の排泄物が溜まっていくと不衛生になって健康に害を及ぼしてしまいます。

 

とはいうものの、細菌だって生きていくためには酸を排泄し続けなければならない。

実は細菌には細菌の体内にたまった酸を細菌の体外にくみ出すポンプのような存在があり、これで酸を排出し、さらには体内でアルカリ性の物質を産生することで酸を中和してしまいます。また、細菌の体を守っている細胞膜の性質を変化させて、外にある酸を体内に通さないようにしてしまいます。

さらには細菌体内のタンパク質やDNAが酸によって変性してしまうのを防いだり、それでも変性してしまったタンパク質やDNAを再生したりするストレスタンパク質を誘導することも知られているとのこと。

上記のような、低Phでも生存し続けることができる能力を「耐酸性能」と言います。

 

う蝕病原性の高い細菌(虫歯を生じさせる中心になる細菌)とは、酸をたくさん作ることができる、というだけではなく、酸性の環境でも生き続けることができる、という性質も必要になります。

 

ミュータンス菌は、他の細菌に比べ、この「耐酸性能」が高いことが知られています。

 

ちなみに異種の細菌同士が暮らしている「バイオフィルム」では、排せつ環境も発達しています。つまり細菌同士が共同で下水道を建設・運営していることがわかってきました。バイオフィルムとは一つの生態系である、と言えます。

 

さて、こうして酸性の環境でも生きていける細菌の性質によって、Phが下がってもドンドン酸を産生し続けます。

そして細菌自身がその酸性の環境に適応するようになっていきます。

環境に適応した上でさらに酸を産生することで、ますます酸性の環境へ。

 

するとバイオフィルム内部の生態系に変化が起き、もっと酸に強い細菌が現れ始めます。こうしてさらに酸につよい細菌がバイオフィルムの主流となり、より強い酸を作りはじめ、そのバイオフィルムの病原性を高めていく、という悪循環が始まってしまいます。

 

もっと進めば歯周病菌も増えていき・・・・・という具合に、バイオフィルムは悪い方向へ成長してしまいます。

 

 

さてここまで虫歯について、お話ししてきました。

 

不思議なことに、むし歯のごく初期では、「むし歯菌」として知られているミュータンス菌の数は少なく、レンサ球菌やアクチノマイセス菌などの菌がバイオフィルムの主体となります。

ミュータンス菌は酸素を嫌う「嫌気性菌」のため、主力になれないのではないか、と推測されます。

 

しかしこれまでお話ししてきたような感じで、どんどんバイオフィルムが成長し、その最深部で酸素がなくなっていくと、ミュータンス菌が繁殖しやすくなる環境が整います。

 

ミュータンス菌は、酸に対する耐性に関しては他の細菌を凌駕している、とのこと。つまり虫歯の原因となる細菌の主役である、と言えます。しかし決してミュータンス菌だけでは「ムシバ」という病変を説明できないことも、事実です。

 

 

 

なんと長い回り道になってしまいましたが、次回から「糖」の説明に戻ります。