審美歯科

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時々、聞かれる歯科の疑問にお答えします。その1

更新が滞っていてすみません。

当院は先日、開業8周年を迎えることができました。

この間、様々な質問を受けてきました。皆さん、本当に熱心なんだなあ、と実感しております。

でもたまに、なかなか答えにくい質問を受けるときがあります。なんというか、一瞬、戸惑ってしまう、とでも言いましょうか。

 

先日、「文献ベースで歯科臨床の疑問に答える チェアサイドQ&A 予防歯科編」(クインテッセンス出版)という本を購入したのですが、この中にはそのような「一瞬、回答をためらう質問」に対する答えが50個ほど、問答形式で掲載されておりました。

ここで皆さんから「時々、質問される」、歯科に関する疑問について、この本を参考にお話ししてみます。

 

 

1、「ヨーグルト磨きの効果はある?」

正に「一瞬、回答をためらってしまう質問」です。自分以外でもこれを聞かれると「え?」となってしまう先生も多いのではないでしょうか?なぜかというと、歯科医も考えたことがないからです。しかも「なんとなくありそう」な雰囲気が出ている。

時々、世間で流布する「健康法」は、奇抜なタイトルで注目を集めるものです。自分の思春期の頃にも「飲尿療法」とか、「パンツを脱いで寝る」という方法が一世を風靡しました。まあ、この2つの方法は、賛成の意見もあり、実践されている方もおられると思いますが、これが行き過ぎると怪しげなものになり、時々、お医者さんの意見を無視して伝聞による療法を行い続け、より症状が悪化してしまう場合もあります。
テレビで「健康番組」が流行ったころ、お医者さんよりも、みのもんたさんの言うことを信じる、という人が多かったそうです。

そして、これまでに2,3名の方に聞かれたことがあるのが「ヨーグルトで歯磨きをするといいって聞いたんですけど、本当ですか?」というもの。

正直、どう答えていいのやら。それまで聞いたことも、習ったことも無かったので。

 

で、それに対する回答ですが、

「現状では、ヨーグルト磨きによるう蝕や歯周病の予防効果は認められていません」

とのこと。

 

この参考書の中で真っ先に述べられていることは、「このような方法が広まっているのは、プロバイオティクスという言葉が広まってきたからではないか」というもの。

プロバイオティクスとは、健康に有益な作用を及ぼす生きた細菌を体内に取り込むことで体内環境を整える、というものとのこと。

当ブログでもたびたびこの言葉を使用してきました。

最近では乳酸菌配合の飲食品を摂取することで、腸内環境を良くする、という健康食品が広く販売されていますね。ヤクルトなどが代表的。

これを口の中にも応用しようという試みもされているのですが、口腔内でのプロバイオティクスについては、なかなか難しい。

2017年9月に開催された日本病巣疾患研究会に出席した際、バイオフィルムについての講演を拝聴したのですが、一度、定着したバイオフィルムの細菌を変えるのは難しい(というか現段階では無理)とされていました。

この参考書でもむし歯や歯周病に対するプロバイオティクスの効果についての数々の報告は、「そのエビデンスの質はすべての項目において、非常に低い、という結果が示されている」とあります。

 

プロバイオティクスを応用した歯科予防は、将来的には可能性がありますが、現段階では効果については保証されません。したがって、プロバイオティクスの考えを根拠とした「ヨーグルトによる歯磨き」も、効果がある、とは今のところ言えません、とのこと。

もちろん、各先生によっても考えがあると思いますので、完全否定されるものではないのですが。

 

また、ご注意いただきたいのは、ヨーグルトも製品によっては糖類が入っているものがあります。味付きのヨーグルトはほとんど甘味料が入っていると考えてください。この甘味料入りのヨーグルトを歯に塗ったまま寝てしまうと、返って虫歯の原因になってしまうので、実行する際は製品の成分に要注意です。

 

 

この記事を書いていて、幼少期に医者である親父に「ガンバルマンでゴキブリを食べた人が死んだと聞いたが本当か?」(本当はもっとエグイ内容の質問でしたが)と聞いたのを思い出しました。軽くあしらわれたのは言うまでもない。

 

 

 

2、「食後30分以内のブラッシング(歯磨き)はやめるべき?」

 

これも数年前に、テレビや紙媒体で大きく取り上げられてから、よく質問されましたし、歯科医の中でも意見が割れていました。確かに「理にかなっている」面もあるので。

食べ物や飲み物を摂取すると、口の中の細菌がそれらをエサにして食事を取り、排泄物として酸を代謝するため、口の中のペーハーは一気に低下してしまいます。これはどの人でも起こる避けられない現象です。その後、30分くらい経つと唾液の成分により中和されて元の中性に戻ります。

歯の性質の維持などはこのペーハーの上下を利用して行われます。詳しくは昨年11月に掲載した「フッ素について、知っていただきたいこと」を参照してください。

で、このペーハーが下がっている30分間の間は、口の中には酸がたくさんあるので、この時間中に歯ブラシで歯をゴシゴシ磨くと、酸の作用でさらに歯が溶けることが促進されてしまうのでは?というのが、「食後30分以内の歯磨きはするべきではない」という説の根拠になっています。

確かに、ありえなくはないですね。

 

これに対しての回答ですが

「食後30分以内に歯を磨いても大丈夫」

というもの。質問形式が若干異なるので、記載されている回答そのままではないのですが、基本的には上記が回答です。

 

確かに欧米を中心に、「酸性食品」の摂取後にブラッシングすると歯がすり減ってしまう「酸蝕症」の危険性が高まる、という報告がされているそうです。

ここで「酸性食品」と「酸蝕症」という言葉が出てきました。

まず「酸性食品」についてですが、「酸」という文字があるのでいかにも「酸にまみれた食品」という感じがしますが、決して食べ物自体が酸性というわけではなく、体内で栄養素が燃焼されたあとの性質を想定しています。具体的な分類法としては、食品を高温で燃やして生じた灰を溶かした水溶液のペーハーが酸性であれば「酸性食品」、アルカリ性であれば「アルカリ食品」となります。

つまり食品が酸にまみれているわけではなく、体内で消化あるいは代謝された後の代謝産物が酸性かアルカリ性か、を示す言葉で、この段階で酸性だと、痛風や尿路結石などを発症しやすくなる、というもの。

もっと言うと、分解されてイオンになった後、酸性の物質ができるか、アルカリ性の物質ができるか、ということ。

口の中では食品は代謝されていないので、イオンになることはほとんどないか、なったとしてもとても微量なため、口腔内のペーハーを左右するほどではありません。

この「酸性食品」「アルカリ性食品」の分類でいくと、「お酢」は「アルカリ性食品」になってしまうのです。じゃあ、お酢のペーハーはアルカリ性なのか、というと正反対で、スーパーに並んでいる商品の状態や、口に入った時点でのお酢のペーハーは酸性です。アルカリ性になるのは、あくまでも「お酢」が胃の中に入って消化、分解、吸収されて代謝されたあと、です。非常にややこしい点ですが、口の健康のためにも、全身の健康のためにも、ぜひ、酸性食品、アルカリ食品とはなんなのか、については知っておいてください。

 

続いて「酸蝕症」という言葉ですが、これは自分が目を通した参考書でも定義が異なっているのもあるので「ズバリ」とはいいずらいのですが、細菌によって虫歯が引き起こされて歯が痛んでしまうのとは異なり、細菌や虫歯は関与していないのに、歯が酸によって長い時間曝されることで歯が弱ってしまう、というもの。

たとえばレモン水やジュース、スポーツ飲料などを摂取後に放置すると、糖分をエサとする細菌の活動とは別に、飲み物自体が酸性のため、その酸によって歯が溶けて弱ってしまいます。

妊娠中につわりを経験したお母さんが、出産後に「子どもを産んでから歯がボロボロになってしまった」とおっしゃることがあるのですが、これはつわりの際に胃酸が口の中に留まってしまったため、ほぼすべての歯が影響を受けて溶かされてしまったため。つわりの際は、大変かもしれませんがうがいを心がけてください。

大学時代に授業で取り上げられていた症例で、小学生の上の前歯だけがボロボロになってしまった写真を見たことがあります。この少年は上を向いて、輪切りのレモンを上の前歯に乗せる、という癖があったそうです。すると、レモン自体の酸によって、歯が溶かされてしまったのです。

お酢は体にはいいかもしれませんが、上で述べたように、酢自体は酸性のため、飲んだ後そのままにしてしまうと、酸によって歯が溶けてしまうので要注意です。

まとめると、酸蝕症とは、細菌が作った酸ではなく、歯が酸に直接触れることで歯が溶けてしまうこと、としておきます。ここでは。

 

ここで本題の戻りますが、欧米で、「酸性食品」の摂取後にブラッシングすると歯がすり減ってしまう「酸蝕症」の危険性が高まる、とされた報告ですが、これが日本で報道される際に、マスコミによって「酸性食品」の部分が「食事」と、すり替わって翻訳されて報道されてしまったようです。

そのため、日本では「食事後にすぐに歯磨きをしてはいけない」が定着してしまったようです。

また、欧米での「酸性食品」摂取後のブラッシングうんたらかんたら、についても評価がわかれているため、欧米で定まった見解になっているわけではありません。

もともとのソースが確定していないことが日本では知られていない上に、誤訳の可能性があることも知られていないため、この説が独り歩きを始めてしまっています。

 

2011年にイギリスで出版された酸蝕症の教科書「Dental Erosion」では「一般に、食後すぐに歯を磨くべきである」という記載があるそうです。

 

今のところ、「食事したあと、すぐにはを磨いてはいけない」については根拠がない、と言えます。

 

 

ただし!!酸蝕症と認められる方、酸性の状態が長時間、持続していると考えられる方には別の対応となりますので注意が必要。

 

 

まあ、マスメディア、特にビジネス系のメディアは、その多くが「意識の高い人」が対象のためか、目新しいニュースや奇抜な健康方法を、センセーショナルに取りあげる傾向にあります。「ビジネス」とつくとなんだか科学的根拠もありそうに思えてしまいますが、情報の出処には注意が必要です。

 

 

続きます