審美歯科

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歯科小話 現代人は縄文人よりも顎が小さい、は本当か?

今回の記事は2012年の歯の健康週間(現・歯と口の健康週間)に合わせて掲載した記事です。

 

 

 

 

世間ではよく、「現代人は昔の人と比べてアゴが小さくなった」と言われますね。
昔は固いものを食べていたからアゴが発達していたが、現代ではやわらかいものを噛むようになったため、アゴの力を使わずに済むために退化してきて小さくなっている、と。

これに対して日本大学松戸歯学部の葛西教授が興味深い研究結果を発表されました。
それは「縄文人と現代人のアゴの大きさは同じ」という、今までの常識を覆すもの。

葛西教授によりますと「縄文人と現代人の下顎骨(下アゴの骨)をCTスキャンしたところ、歯列幅は縄文人の方が現代人よりも広かったが、骨体最大幅や骨体基底幅は縄文人と現代人とではほぼ同じだった」とのこと。

さて、少し専門用語が出てきましたのでご説明いたします。

まず、「下顎骨」ですが、これは下あごの骨です。下の歯が埋まっているところ。

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写真の左右にわたっている白い部分の骨です。

この下顎骨だけを取り出してみると……….

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こういう風に馬蹄形になっています。馬のヒヅメみたいでしょ?口の底って、骨で覆われているように思ってしまいますが、実は馬蹄形の間の空間が、舌などの大量の筋肉によって埋められているのです。

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前方から。

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後ろから。

ちなみによく「エラが張っている」という言い方がありますが、この「エラ」の部分は下図のようになります。

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横から見ると

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このような感じ。

この「エラ」のところには、咀嚼筋(モノを噛む時に動く筋肉)の一つで、噛むときに最大の力を発揮する「咬筋」が付着しています。

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この咬筋は、噛む力が強かったり、スポーツなどでかみしめる力が強くなるとどんどん大きくなります。腕立て伏せをすると腕回りの筋肉が大きく発達するのと同じです。

そして、咬筋が太くなるにつれて、骨に付着する部分の筋肉も太くなり、太くなった分を支えるために付着している骨の部分も面積を広めようとします。

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上図のような方向と、画像の手前側に張り出してくる感じ。

それがいわゆる「えらが張った」状態です。

さて、脱線が長くなってしまいましたが、今度は「歯列幅」、「骨体最大幅」、「骨体基底幅」についてご説明いたします。

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上図のように、下顎骨の左右の間の各点での距離を表わします。

つまり、縄文人と現代人を比べると、一番上の歯列幅は縄文人の方が広がったけども、真ん中と一番下の骨体最大幅と骨体基底幅は変化がなかった、とのこと。

図からお分かりのように、骨体最大幅、骨体基底幅は、骨自体の距離を測ったもの。これが骨の大きさを比べる指標になると思われます。
それに対し、歯列幅は図のように歯の頭の部分の位置により、距離が変わります。つまり骨自体ではなく、歯が内側か外側に傾いていると距離も変わってしまいます。

つまり研究結果を写真でご覧いただくと、

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こういう感じ。縄文人は、歯が真っ直ぐ生えているのに対し、現代人は漢字の「八」の字をしていますね。

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骨の幅は変わらず、歯の傾く角度が変化しているそうです。

この原因について教授は「臼歯(奥歯)本来の役割である、食べ物をすり潰しながら噛む運動が、現代人の方が少なくなっているため」と分析されています。

歯は、場所によって役割が違っています。前歯は鋭い形をしていますが、これは肉や野菜を、適度な大きさに「切り裂く」ため。このため前歯が必要な運動は、ナタを振り下ろすような動き、つまり上下の動きのみ。

これに対し、奥歯(臼歯部)では、前歯で適度な大きさに切り分けられた食べ物をすり潰して飲みやすい状態にする役割があります。そのため、粉を引く「臼」のようなずんぐりとした形をしています。

動物を例にとると、ライオンなどの肉食メインの動物の口の中では、全体的に歯はとがっています。これは獲物を口の中で切り裂き、骨から肉をこそぎ取るのに有利。

一方で象などの草食メインの動物では、草をすり潰す必要があり、臼歯が異常に発達し、口の中は、ほぼ臼歯で占められます。
以前、十勝に住んでいた時、更別町にナウマンゾウの化石を見に行ったことがあります。
臼歯だけで人間の頭の倍以上の大きさがありました。

人間は「切り裂き」も「すり潰し」も、両方行うのですが、縄文人に比べ、現代人の方がやわらかい食べ物を食べることが増えたため、「すり潰し」運動を行う機会が減り、アゴを数回上下するだけの咬み方が多くなってきたため、奥歯も「切り裂き」に有利なように傾いてきたのかもしれませんね。

アゴの成長には「噛む回数」も大事ながら、「どう噛むか」といった咬み方も重要と言えます。