審美歯科

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腸内細菌について学んできました。その5

アメリカの肥満の分布と抗生物質の処方頻度の一致を示した、ニューヨーク大学のMatin J.Blaser博士ですが、続いてその原因についてのお話が始まりました。

 

まず抗生物質と腸内細菌についてのお話し。

現代では応用される機会が多くなった抗生物質ですが、これは決して「悪玉菌」だけを殺すわけではありません。悪いヤツだけに狙いを定めるスナイパーではなく、善玉、悪玉関係なく、広い範囲の細菌を殺してしまいます。当然ですが、100兆も細菌がいる細菌の宝庫、腸内細菌(人体の細胞の総数は60兆個と言われている)の細菌たちも、多くの種類が死滅してしまいます。

腸内細菌というのは本当に多様な種類の細菌が生息しており、それぞれ代謝できる物質、作り出すことができる物質が異なっています。そして細菌同士も互いに連絡を取り合い、さらには免疫細胞を通して人体とも話し合い、代謝物の産生・吸収をコントロールしています。

しかし抗生物質によって悪玉菌とともに腸内細菌の細菌も死滅してしまうと、腸内細菌の分布に偏りが出てしまい、コントロールも困難になってしまいます。このあたりは非常に深いところで、語っている自分もまだお勉強中ですので、詳しい言及は避けますが、抗生物質によって一部の細菌が大勢を占める、偏った細菌分布になってしまい、腸内細菌同士や腸内細菌と人体とのバランスも変化し、肥満となってしまいます。

アメリカにおける肥満の分布と抗生物質の処方量が多い地域とが一致するのには、このような背景があります。

また、一部と思いますが、アメリカの家畜は成長を促すために上記の性質を利用して、抗生物質を多用して家畜の腸内細菌を壊して肥満になりやすくさせ、さらには高脂肪のエサを与えている、とのこと。(Martin Blaser博士の発表のまま、記載)

これはアメリカに限らず中国など他の地域でもそのような話を聞きます。日本だから安全だ、とはここでは言及できません。単に知らないだけです。

自分は幼少期にアメリカのドラマを見ていたこともあり、アメリカの肉料理の文化にとても憧れを持っているし、それは今でもかわりませんが、そのお肉の生産については、少なからず関心を持たざるを得なくなりました。これはアメリカに限らず、外国産、日本産でも同じですが。

 

ちょっと脱線しましたが、次に博士は、腸内細菌はこれまで垂直伝搬(親から子への伝搬)を繰り返してきた、と指摘。

腸内細菌は出産の際、赤ちゃんが母親の膣を経るとき、もしくは破水に触れることで、母親の腸内細菌に感染します。また、誕生後、家族(主に母親)からの直接的な接触(口移しなど)や、授乳の際の乳房などを通しても、母親の菌を体内に受け入れ、垂直伝搬していきます。

こうして腸内フローラが形成されていきます。

 

これが母から子へ、そしてその子からさらに子孫へ、を繰り返し、なんと一億年以上も受け継がれ、進化してきました。

 

しかし現代において、この一億年以上も繰り返されてきた腸内細菌の垂直伝搬が、大きく乱されています。

 

まず出生の際ですが、経膣分娩ではなく帝王切開にて、母親の膣を経ることなく誕生する機会が多くなってきたことが挙げられます。

この帝王切開による誕生の場合の、新生児の腸内フローラへの影響については、この後の発表でも繰り返し言及されるのですが、帝王切開によって誕生した場合、経膣分娩に比べて腸内細菌が異なる、とのこと。

また、母親が抗生物質を使用する機会も増え、母乳ではなく粉ミルクによる授乳も増加、赤ちゃんへの抗生物質の投与なども行われ、細菌が減っていく機会が増えています。そして赤ちゃんの入浴習慣も、その要因の一つとしてあげられていました。

 

これもこの後、繰り返し述べられることになるのですが、「無菌であること」は、「健康であること」ではありません。むしろ人体から細菌を遠ざけてしまうことでの免疫の低下や、アレルギーの増加が指摘されていました。これについては後でも触れます。

 

博士は、アメリカでは妊婦の、実に50パーセントが抗生物質の治療を受けている、と指摘。小児に対してはもっと処方されている、とのこと。

また、(母親の胎内の時期を含め)人生の初期に抗生物質の投与を受け、肥満になりやすい腸内細菌になってしまうと、たとえその後、腸内細菌が正常になったとしても肥満のままになってしまう、と、実験結果とともに指摘。
さらに博士は、母親の腸内細菌が減ってしまうと、子にはその減った量が受け継がれる、と話していました。

親子三世代を例にしてお話しします。たとえば、祖母がもともと100の腸内細菌を持っていたとします。その後、祖母が病気などで抗生物質を投与されたために腸内細菌が60に減ったとします。そして60になった段階で出産。

すると祖母の子、つまりは「母」は、祖母がもともと持っていた100を受け継ぐのではなく、60の腸内細菌を受け継ぐことになってしまいます。さらに問題なのは、腸内細菌の絶対数は増えないため、母の子には60以上を受け継ぐことができません。そして当然ですが母も人生において抗生物質の投与を受ける機会もあると思います。そのため母の腸内細菌が「30」となってしまい、その段階で出産すると、その子供の腸内細菌の上限は「30」となってしまうのです。

 

博士は、抗生物質の乱用により、一億年以上、繰り返されてきた腸内細菌の伝搬が、現代において断絶しつつある、という旨の発言をしていました。(加納の意訳あるかも)

 

そして、抗生物質を使用した子供では、返って感染症による死亡率が増加している、とのこと。

腸内細菌は免疫と会話をしています。免疫は、その会話を通して、免疫力を強くしています。これも腸内細菌と人体との「Win-Win」の関係の一つと言えますが、抗生物質によって腸内細菌が減ってしまったことで、免疫が会話する相手も少なくなってしまい、腸内細菌と適応免疫との間の会話のみに偏ってしまう、とのこと。

昨年の夏に「細胞乗っ取り作戦」と題した記事を掲載しましたが(昨年の7月下旬の記事を参照)、その免疫のところでも触れましたが、免疫には「自然免疫」と「獲得免疫(適応免疫)」があります。「自然免疫」は、白血球などの常時体内に存在する免疫細胞のこと。胎内を24時間警備するとともに、細菌などの侵入者に対して、最初に攻撃を仕掛けています。「獲得免疫(適応免疫)」は、自然免疫だけでは侵入者を止めることができなかった場合に発動する免疫で、その侵入者のための特製の武器である「抗体」を作り出し、侵入者を完全に死滅させます。

腸内細菌が多く、多種多様だと、自然免疫も適応免疫も、両方とも腸内細菌と情報交換することで強化することができますが、腸内細菌が少なくなってしまうと腸内細菌との情報交換は「適応免疫」だけに偏ってしまい、そのため「抗体」が優勢となってしまいます。

この「抗体」ですが、特製だけあって強力なのですが、強力すぎて人体にも有害なのです。適正な量であれば人体を守る「武器」となるのですが、過剰になると人体を攻撃してしまいます。この自分の免疫物質が自分を攻撃してしまう疾患のことを自己免疫疾患といいます。

腸内細菌が少ないことで適応免疫のみが強力になってしまい、自己免疫疾患も増えてしまうのです。

なお、アレルギーと自己免疫疾患は、同じものではありませんが、適応免疫の過剰反応、という点では一致しているため、腸内細菌とアレルギーとの関係も指摘されています。

 

 

そして、講演で、自分が最も気になったこと。

それは小児が抗生物質の投与を最も多く受ける疾患が、中耳炎や咽頭炎である、ということ。

これらは首から上の頭部の、それも気道に起きる疾患です。

 

そして9月に開催された日本病巣疾患研究会において、上咽頭炎が多方面に及ぼす影響について学んでいたところ。

耳管の入り口も上咽頭付近にあり、上咽頭での炎症が耳管に至り、中耳炎になるケースがある、とのこと。

と、なれば、やはり上咽頭の炎症を避けることが重要となってくると思われます。

その手段の一つが鼻からの呼吸であり、就寝時の口テープ。

 

自分は「あいうべ体操」を、歯並びや顔貌の変化、感染症を防ぐためにすすめてきましたが、この日の講演で新たな意味が加わりました。

それは、上咽頭での炎症を予防して抗生物質の投与を避けることで、子供の腸内細菌の減少を防ぐこと。

腸内細菌の減少は、自己免疫疾患や肥満、糖尿病にも影響しています。

 

将来、お子さんが健康でいるためにも、ぜひ、「鼻呼吸」をお子さんに身に着けてあげてください。

 

少し腸内細菌とずれましたが、2講目は以上。

 

 

 

 

*文中、帝王切開や粉ミルクによる授乳についての記述があります。この点はシンポジウムでも繰り返し述べられていたことであるため、避けることができませんでしたが、帝王切開によって誕生したり、粉ミルクによる授乳で成長し、今でも健康で元気いっぱいのお子さんもたくさんおられます。
この記述により、帝王切開、人口授乳に対する誤った認識が広まってしまうことを強く懸念する、という一文を強調しておきます。