審美歯科

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腸内細菌について学んできました。その8

さて、午後の講演は続いていたのですが、次はお母さん方も関心が高いであろう、授乳についての内容となります。

 

4講目は「ヒトミルクオリゴ糖とその分解酵素から考える母乳栄養児とビフィズス菌の共生・共進化」という演題。

 

論旨集の導入部分に、

 

「母乳栄養児の腸管では授乳開始直後からビフィズス菌が速やかに増殖し、いわゆるビフィズスフローラが形成されることが広く知られていた。」

 

とあります。

この講演では、世間でも有名なビフィズス菌が頻繁に登場します。

このビフィズス菌ですが、出産後、赤ちゃんに授乳を開始すると、腸内で増加するそうです。しかし離乳の開始とともに減少してしまう、とのこと。

そして固定食の開始とともに、今度はバクテロイデス菌が増えてくる、とのこと。

 

つまり有名なビフィズス菌は、授乳でしか増加しない、と。

 

なんでそうなのか?というと、それは乳汁の成分の中で3番目に多い「ミルクオリゴ糖」に原因がある、とのこと。

このヒトミルクオリゴ糖(以下、論旨集にある表現に則って「ヒト母乳オリゴ糖」とする)ですが、なんとヒトの、つまりは赤ちゃんの栄養にはならないのです!

赤ちゃんの栄養にならないのに、なんで3番目に多い量が作られているのか?

3番目に多い量、となると、その生産のために、非常に大きいエネルギー量が乳腺で使用されている、とのこと。

なんでそんなことをしてまで、母親はヒト母乳オリゴ糖を作らなければならないのか?

 

 

このヒト母乳オリゴ糖は、赤ちゃんの栄養にはなりませんが、赤ちゃんの腸内細菌、特に赤ちゃんの時期に優勢となっているビフィズス菌の栄養源になっているのだそうです。

つまり母親は、赤ちゃんの腸内細菌の栄養まで、提供していることになる!

ちなみにヒト母乳オリゴ糖は、1型糖鎖構造(Galβ1-3GlcNAcβ-OR)を有するオリゴ糖を多量に含んでいるそうですが、これは人類だけで、類人猿を含む他の哺乳類は2型糖鎖構造(Galβ1-4GlcNAcβ-OR)の割合が高い、とのこと。(一応、化学式を書いたけども、普通に暮らしていくうえでは全く必要にならないので、飛ばしても構いません。この分野のマニアになりたい、という、風変りな方は専門書をご覧ください)

つまりヒト母乳オリゴ糖の成分は、生物の中でも唯一、ヒトだけが作り出すことができる、とのこと。
そしてこのヒト母乳オリゴ糖を赤ちゃんの腸内に生息するビフィズス菌が食べるのですが、ビフィズス菌の中でも役割分担がある、とのこと。

 

一口に「ビフィズス菌」と言っても、たくさん種類があるんですよ。

 

細菌は、上から(大雑把なほうから)「門」「網」「亜網」「目」「科」「属」「種」へと、だんだん細かく分類されていくのですが、「ビフィズス」というのは、ビフィドバクテリウム「目」ビフィドバクテリウム「科」の細菌の総称を指すのだそうです(違ってたらごめんなさい)。「科」ということは、その下に「属」もあるので、すると種類も変わるし、同じ「目」あるいは「科」でも、「属」が違えば性質も変わってしまいます。
ヒトだって、モンゴロイドとかコーカソイドとかって、あるでしょ?

ちなみに歯科で「虫歯菌」としておなじみの「ミュータンス菌」ですが、歯学部の授業なんかでは「ストレプトコッカス・ミュータンス」として覚えさせられます。「ミュータンス」は「種」名です。

「ストレプトコッカス・ミュータンス」は虫歯を起こす中心となる菌ですが、同じ「ストレプトコッカス・pneumoniae」となると肺炎球菌として知られていますし、「ストレプトコッカス・pyogenes」は溶連菌として、お母さん方でもご存知の方も多いと思います。

つまり、下方の種類が異なれば、違う細菌になる、と。人間でも親戚は顔が似てても性格やなんかは異なりますしね。

 

 

ちょっと遠回りが過ぎましたが、この「ビフィズス菌」の中の「Bifidobacterium bifidum」は、腸内にやってきたヒト母乳オリゴ糖をちぎって外に置いておき、貯めておく。そしてすこしづつ食べていく、とのこと。また同じ「ビフィズス菌」の中の「bifidobacterium bifidum」は、その外に貯めてあるヒト母乳オリゴ糖を分解して、他のビフィズス菌の仲間たちに分配している、とのこと!

なんと、一族の中で共同して生活している!!!

 

つまり、生まれたばかりの赤ちゃんという「フロンティア」に最初に「入植」してくるのがビフィズス菌で、彼らはまだ成熟していない、エサの少ない環境で一族が支えあって生活し、徐々に数を増やし、そして授乳の終了とともに、他の多くの細菌たちにその場を譲り渡す、まさに「開拓の先駆者」のような存在!(説明が違っていたらごめんなさい)

 

このビフィズス菌ですが、経膣分娩にて、母親の菌が赤ちゃんに受け継がれるのですが、帝王切開だと受け継ぐことができず、赤ちゃんの腸内は無菌の状態となります。

また、人工乳を使用すると「開拓者」であるビフィズス菌を増やすことが難しい。

これらはシンポジウムで繰り返されていたことです。

 

*お断り

シンポジウムにおいて、経腟分娩と母乳による授乳の重要性が指摘されていたのは事実で、それを避けることはできない、と思いました。ただ、自分は歯科医ですので、経腟分娩・授乳の場合とそれ以外との違い、までは言及できません。ここから先は専門医の意見に従うことをお勧めします。

 

 

 

さて、ここからちょっと、シンポジウムの内容を離れるのですが、夏ころ、当ブログで「糖」について、と題した記事をいくつか掲載いたしました。

その中で「ラクトース」について説明しましたが、グルコースとガラクトースがくっついた「二糖」とあります。

このラクトースは、上記のヒトミルクオリゴ糖と異なり、腸内細菌の食糧とはならずに、そのまま赤ちゃんの栄養となります。

母乳にはこのほか、赤ちゃんの免疫となるラクトフェリンや、初乳に含まれる「分泌型IgA」も細菌やウイルスを守る成分として赤ちゃんに与えられます。

母乳は、赤ちゃんに栄養を与えるどころか、赤ちゃんの腸内にいる「生涯のトモダチ」のお世話までしているんだ、と感心してしまいました。

 

 

 

追記
午後の講演の中で、ある演目の後の質問の時間の際に、ある著名な研究者の方が演者に対し、「あなたはちゃんと母親の肛門にも注目しているのか?!」と、とてもするどい口調で質問されておられました。(赤ちゃんに母親の腸内細菌が受け継がれる、ということは、母親の腸内や肛門の細菌や状態が赤ちゃんに受け継がれる、ということ)  演者の方は「母親の肛門の重要性は認識している」と回答。それに対しても質問者は「赤ちゃんの腸内細菌には、母親の肛門の細菌も詳細に調べる必要がある!」という主旨の質問を、強い調子で繰り返しておられました。
結局、そのあと10分間ほど、会場では「母親の肛門」という単語が頻繁に飛び交い、「肛門」に関する非常に活発な議論が展開されました。

自分はこの議論に深い感銘を受け、「東京・鴻門の会」として、長く後世に語り継ぐことをケツ意した次第。お粗末!!

 

 

・・・最後はふざけてしまいましたが、今振り返ってみると、母親の体は、全て子供を守るためにできているんだなあ、と、ほのかに感動してしまいました。健康に生まれて、健康に育つ、って、「細菌レベル」で奇跡的なことなんですね。