



審美歯科
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むし歯とPhの関係について その3
- Date / 11月 24th, 2017
- Category / クリニック情報
さて、今まで、むし歯ペーハーの関係についてお話ししてきましたが、ここまでは5時間にも及んだ講演の最初の一時間くらいにしかすぎません。
この後、目的のCAMBRAのリスク評価のシステムと、そのリスク評価に合わせた予防・管理方法について、とても詳細で具体的なことが説明されてたのですが、ここから先は有料セミナーということもあって、詳しくお話しすることはできません。
また、予防法についてはフッ素やフッ素配合ケアグッズがとても重要な位置を占めていたのですが、それはリスク評価とは別個なので、かのう歯科でCAMBRAを運用することになった場合は、フッ素を忌避される方でもリスク評価の結果に対応した、ふさわしい方法を準備する予定です。
さて、会場では講演でも取り上げられた予防グッズが展示されていたのですが、その中で自分が興味を持ったものをいくつかご紹介いたします。
まず気になったのは、「ペーハーを調整する歯磨き剤・ジェル」。
これまでのご説明通り、予防にはペーハーを中性に維持することが重要になります。
この歯磨き剤にはフッ素ははいっておらず、ペーハーを中性にする成分とキシリトールが配合されています。(詳しい成分については、正式に導入が決まってからご説明いたします)
この歯磨き剤の使用例ですが、たとえば虫歯や歯周病菌が非常に多く、フッ素以前にまず口腔内の環境改善を行う必要がある、と思われる方への応用。
お子さんで、2歳ですでに虫歯がたくさんある、という子もおられます。そのケースに対してはフッ素で歯質を強くすることも重要ですが、ペーハーの改善も重要と思われます。
なお、クロルヘキシジンなどの殺菌成分を使用した方法も、CAMBRAの中で挙げられていました。
続いて、「赤ちゃん用の歯磨きペーパー」。(正式名称不明)
こちらもフッ素が入っておらず、キシリトールのみ配合されているもの。しかも歯磨き剤でも歯ブラシでもなく、少し湿ったウェットティッシュのようなもの。もともと赤ちゃんなどの口腔の清掃が難しいお子さんのための歯磨きグッズとして、アメリカで販売されているようです。
これも見たとき、歓喜してしまいましてね。
当院には1歳にも満たないお子さんも多く来てくれていますが、結構、見かけるのが「哺乳瓶う蝕」です。
当ブログの今年一月の記事をご覧いただきたいと思います。
「離乳食開始とお口の健康」とした記事です。
この記事の中で、母乳は本来、むし歯の元とはならないが、離乳食の開始とともに母乳を虫歯にできる細菌が定着する、と書きました。
1歳6か月くらいだと、まだ授乳してから、あるいは授乳したまま寝る、というお子さんも多く、その場合、特に上の歯に母乳が原因でできたむし歯である通称「哺乳瓶う蝕」になってしまう場合が非常に多い。
でも、授乳したまま寝てしまうので歯磨きもおぼつかない。自分は「せめて授乳のあと、綿棒で拭ってください」と説明していました。何もしないよりはまだいいか、と。
でも、綿棒の代わりにこのキシリトール入りのペーパーで授乳後に、歯の表面を拭ってもらえば、キシリトールの作用で哺乳瓶う蝕に対して、もっと踏み込んだ対策ができるのでは?と。講演の中で、キシリトールは細菌の発酵のもとにならず、また一部の細菌を歯につかないようにする働きもある、と説明されていました。
一方、これも当ブログの中の「糖について」の糖アルコールの項でもお話ししましたが、キシリトールが属する糖アルコールは、小児が過剰摂取してしまうとお腹を壊してしまう、とあります。
この点について、コーナーにいた方に聞いたところ、ガムに含まれているキシリトールの量から見れば量が少ない、とのこと。
その上で、夜寝る前に拭う程度に使用するのなら、問題ないと思われます。
この点はメーカーにしっかりと確認したうえで、導入しようと考えております。
上記が今後、当院でも導入しようと考えているケアグッズです。
また、他にも「カニスクリーン」という、むし歯リスクの測定器もなかなかおもしろそうでした。
これまでも口腔内の細菌を採取して培養することで、口の中のリスクを評価する試みが行われてきましたが、それは「ミュータンス菌」や「ラクトバシラス菌」など、特定の細菌のみを培養するもの。
ここまでお話ししてきたように、むし歯などのリスクが高まるのは特定の細菌が増えたからではなく、バイオフィルムが酸を産生するために活発に活動しているか否か、が重要。このバイオフィルムは特定の細菌だけではなく非常に多くの種類の細菌が共同して酸を産生しています。
口の中の症状をバイオフィルムを単位にしてみてみると、これまでの細菌を培養する方法には限界が見えてきます。
そこで「カニスクリーン」が開発された、とのこと。
カニスクリーンでは細菌の数を調べるのではなく、バイオフィルムが活発かどうかを調べることになります。
ここでまた当ブログの「糖について」でお話しした、ミュータンス菌についての部分をご覧いただきたいと思います。
細菌は酸を産生すると、細菌自身の体の中も酸性になってしまいます。すると細菌も死に近づいてしまいます。
そのため、細菌はポンプを使って体の外に酸を輩出しています。
このポンプは勝手に動くのではなく、車のエンジンを動かすのにガソリンが必要となるのと同じく、エネルギーが必要になります。そこで生物に共通するエネルギーであるATPを使用してポンプを動かします。
細菌が酸をたくさん作るほど、細菌の中にも酸が溜まっていくので、それを輩出するポンプも活発になります。ATPもそれに応じてたくさん使用されます。そのため、活発なバイオフィルムほど、ATPの成分も多くなります。
このATPの量を調べてリスク評価しよう、という装置です。いやあ、アメリカ人って、凄いことを考えますね。優秀というか、マニアックというか・・・。新しいものを生み出すのって、優秀かどうかじゃなくてマニアックかどうか、なんじゃないかと思ってしまう今日この頃。
・・・・ただ、ですね、この機械、結構、お高いんですよ。その上、検体の採取方法もなかなか難しい、とのこと。導入には慎重にならざるを得ないのですが、前向きに検討したいと思います。
さて、上記の方法は、ほんの一部です。
他にもたくさんの予防方法が提案されていました。中には前向きに導入を検討を考えているものもあれば、ちょっと無理かも、というものも。
基本的にアメリカと日本では法律などが異なるので、一概に「YES!」ともいえないのですが。
なんせアメリカでは、フッ素が5000ppmも配合されたケアグッズも発売されている、とか。
なお、日本では、一般販売されている歯磨きグッズのフッ素は1500ppmまで。歯科医院で使用するフッ素の塗布剤は9000ppmとなっています。5000ppmといえば、もう少しで日本の歯科医院と同じ。
また、講演の中では、もともと唾液が少なく虫歯になりやすい方の対策として、キシリトール入りのアメやガムなどを頻繁に食べることで中性に保つよう指導する旨のことが説明されていました。
が!これについても最近、お医者さんの中には疑問視する方もおられるようで。
腸内フローラシンポジウムに出席する前に、「予習」として腸内細菌に関する書籍、参考書をいくつか読んでいたのですが、その中の一つである「糖尿病診療マスター 6月号」の中で、人工甘味料と糖尿病との関連が指摘されていたのですよ。
これについて、いずれお話ししようと思っているのですが、頻繁な人工甘味料の使用は口腔内では良くても、腸内細菌には悪い作用を及ぼすかもしれない。
また、ペーハーに注目して、食事後に重曹でうがいする、ということにも触れていました。これなら瞬時に戻る、と。この点は、かなり懐疑的な視点を持ってしまうのですが。
ここで立ち止まって考えていただきたいと思います。
上記の事に共通する事。それは口が渇くなら常に人工甘味料入りの食品を使用する、ペーハーが低ければ重曹を利用する。
非常に合理的で、アメリカ的なストレートな解答を求める姿勢を感じることができます。が・・・。
自分は事前に、腸内細菌のシンポジウムを聴講していました。
その中では「抗生物質の使用地域と肥満の地域が一致している」という結果が提示されていました。
「病気になったら薬を使う」というのも、とてもアメリカ的な合理性を感じますが、必ずしもすべて解決しているわけではない。
いや、「合理的」と思い込みすぎて、脇の結果を「些細なこと」として見過ごしがちなのではないでしょうか?
唾液の中にはペーハーを改善する成分があります。それは良く噛むことで分泌することができます。上でペーハーを改善する歯磨き剤に興味を持っている、と書きましたが、それはあくまでもペーハーが下がりすぎて虫歯が多い場合。個人の状況によって使用を考慮しようと思っています。フッ素も日本で使用される場合は、劇的な変化を及ぼす範囲にはありません。
また、乾燥症にも「あいうべ体操」や口にテープを張ることで、一定の成果を得ることができます。
これらは薬やなにかの成分を使用せずとも、人体にもともと備わっている機能を利用するものです。
アメリカは、医学の先進地であることに疑いの余地はありません。歯科に関してもスカンジナビア諸国に匹敵するほど進んでいる国です。
一方でアメリカ的な食文化や医学知識によって、「良く噛む事」や「腸内細菌に良い食事」など、日本人が古来から持っていた健康文化が急激に変化しているのも事実です。
その知識をすべてそのまま受け入れるのではなく、またすべてをあからさまに拒否するのではなく、良いものは取り入れて、日本人の体質に合った、「日本人的な方法」で実現する必要もあるのではないか、と思います。
以上がCAMBRAについて、ほんの一部のご説明となります。
自分は本格的な導入を考えているのですが、リスク評価の方法などでまだ知識不足の点も多いため、もう少し講演に出席してみようと思います。