審美歯科

診療案内

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歯科・小児歯科
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水曜・祝日
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札幌市西区西野5条3丁目7-1
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高齢の方の訪問診療の際の口腔ケアについて学んできました。

昨日は休診をいただきました。ご迷惑をおかけいたしました。

 

何をしていたかというと、全国高齢者施設看護協会が主催した、食支援のための口腔ケア、をテーマにした講習会に出席していました。

当院は今年から、若干ではありますが訪問診療を開始しました。自分は訪問診療の経験はありますが、ここで改めて実践について学びなおそうと考えた次第です。

会場には多くの参加者がいましたが、多くは歯科衛生士と看護師の方々。自分と同じ歯科医は2名くらい?他は介護にかかわる様々な職種の方々がおられました。

講習会は2部構成で、朝の9:45から夕方17:00まで、講義と実技で構成されていました。

講師は関西で活躍されている歯科衛生士さんでしたが、ご自身でも介護施設を運営されているとのこと。

長時間の講習会であっただけに内容は多岐にわたっておりました。

近年、注目されているオーラルフレイルについての説明や基礎事項の説明から、口元が緊張している方のケアの仕方、感染症を防ぐための方法など、とても勉強になりました。

実践の際は作業療法士の方と相互実習の形となりました。

前日に同じく全国高齢者施設看護協会が主催していた別の講習会にも当院のスタッフを派遣していたので、今後、内容を確認したいと思います。

 

さて、「オーラルフレイル」という言葉ですが、自分は昨年からこの言葉に触れる機会が増えてきました。

昨日の講義では米山武義先生という、長年、訪問診療に携わっていた方の研究結果についても触れられておりました。この分野では大家とのこと。実は自分は5月に米山先生の講演会に出席していました。米山先生の講義も実践的な内容から医療制度にまで及ぶ広い範囲のものとなりました。

昨日の、ますいえつこ先生も米山先生も、口腔ケアを行って感染症などを防ぐことで、多くの医療費を抑えることができること、そして介護者の周辺の方々の負担が減ること、について説明されていました。

本人の生活環境が改善されることが第一ですが、介護を行う家族など周囲の人の負担が減ること、もとても大事。米山先生は、ケアのされない方の口臭は、トイレなどの臭いと同じく悪臭であり、口腔ケアを行うのは本人のためのみならず、周囲の人のためでもある、と説明されておられました。

かなりストレートな表現ですが、核心をついている発言。

 

今年、当院は「かかりつけ機能強化型歯科診療所」の申請をしましたが、これは「普通」の歯科診療所にも、ある程度の訪問診療の機能を持たせる内容となっています。昨日の講演でも指摘されていましたが、今回の保険制度の改定で厚労省は、2025年に高齢化率が上昇することを見据えているとのこと。

自分は「オーラルフレイル」という言葉が登場した当初は、「なんのこっちゃ?」と感心を持っていませんでした。それが昨年、友人に誘われるままに「ゆびのば体操」の講演会に出席して姿勢と歩き方について学び、「あいうべ体操」」のコースを受講して口呼吸の弊害と食べる機能の重要性を学んでいましたが、後で実感しましたが、この二つはまさに「オーラルフレイル」対策そのもの。

オーラルフレイルという言葉だと高齢者に範囲が狭まってしまう感じがしますが、口呼吸や姿勢に注目すると、子どもと高齢者へのフレイル対策は近接していることがわかります。

また、昨日の講習会では、口腔ケアを受ける人の姿勢についても説明がありましたが、様々な障がいのために安定した姿勢を維持することが難しい、とのこと。自分で体験する、ということで椅子にビニールシートをかけてその上で座るように指示されたのですが、これが難しい!皆さん想像できると思いますが、足で踏ん張らないと簡単にずり落ちてしまう。でも、脳卒中などで不自由になると足で踏ん張ることも難しく、一定の姿勢を維持することが非常に困難な場合が多い。また、座る姿勢で筋肉の作用も変わり、返って口が空け辛くもなってしまう。いくら「お口をあけてください」を叫んでも、空けることができなくなってしまう、とのこと。講習会でもその際の姿勢を楽にする方法も説明されていました。

ゆびのば体操は、足指への対応ですが、足指をどう使うかで全身の姿勢にも影響し、それが首から上、噛み方にも影響を及ぼすことが判明しています。

口の健康を考えるとき、「姿勢」はとても重要。首から上の筋肉にだけ注目していてもいけないことがわかります。

なんで加納が高齢者の訪問診療を?と聞かれることがありますが、上記の理由で子供の姿勢や口の筋肉に注目することは高齢者のそれに注目することにつながるので、比較的に入りやすかったと言えます。

ようやく準備が整った「CAMBRA」という虫歯予防管理のシステムですが、口のペーハーが深く関与していますが、これも口がちゃんと閉じているかが重要。

昨日の講演では糖尿病についても言及されていましたが、もはや歯科と糖尿病は切れない関係となっているようです。

 

 

 

皆さん、8020運動、という言葉を聞いたことがありますか?

80歳になっても20本の歯を残そう、という全国運動です。一説には「十勝が発祥だ」と、十勝の人に聞いたことがありますが。

最近では「8024運動」になっています。

 

昨日の講演で ますいえつこ先生が言及されていたのですが、近年、確かに歯が多く残っている高齢者が増えたそうです。

しかしいくら歯が残っていても、「歯でかむ」「噛んで食べる」などの働きが無いと、単に歯が残っているだけ、という状態になっていることが多いとのこと。

確かにこれでは返って清掃が悪化して、感染症を引き起こしかねません。

 

ますい先生は、単に歯が残っていもしょうがない、機能しないと意味がない、という主旨のことをおっしゃっていました。

 

確かにその通りですね。何にも使われない歯を残して数字だけ見て「8020が達成された!」と言っても、返って介護の現場では自体が悪化しているかもしれない。

 

前述の米山先生がおっしゃっていて、昨日のますい先生も言及されていましたが、ちゃんと歯でかむと感染症が減り、認知症の可能性も少なくなるそうです。歯からの刺激は直接、脳に伝えられますので。また、口で噛む、という行為を行うことで口から先の、舌やのどの筋肉も機能することができますが、歯でかまないとその筋肉への刺激もなくなります。

宇宙飛行士は、宇宙に滞在する時間の多くを筋トレにあてる、と聞いたことがあります。宇宙では重力がないために筋肉に負荷がかからず、衰えてしまうから、とのこと。

まさにこれ。口全体の筋肉、喉の筋肉も、使わなければ衰えてしまうのです。

この部分の筋肉が衰えてしまうと、咳をすること、痰を出す機能なども衰えしてしまいますし、口の周りの筋肉が衰えることで口が空き外部の菌や冷たい空気も侵入してしまう。でも口の中も喉も乾いているので粘膜による免疫も機能しない。

結果、持続的に細菌感染が起こり、微熱が続いたり、発熱を繰り返すことになります。

また、周囲の経済的、体力的な負担も増加することになります。

 

昨日の ますい先生の、「機能させないといけない」には納得させられました。

 

 

8020の目標は達成されつつあります。では残った歯をいかに機能させるのか。

これが次の課題になるかもしれません。

 

80歳で20本残しつつ、機能させる、という目標を達成するには、子供のころからの歯並びへの対策、筋肉の対策も重要となります。

 

というわけで、9月、10月と、小児の歯並びと機能の関係に関する講習会に出席する予定です。