審美歯科

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むし歯とPhの関係について その1

さて、講演の内容ですが、わざわざアメリカからやってきた、というだけあって、授業は英語。もちろん翻訳機を使用するのですが、スライドの文章まで英語(苦笑)。会場には凄い人数の人がいたのですが、「もしかして自分以外、みんな英語がわかるのか?」と焦り、自分も「英語が分かっているふり」をするのが大変でした。

実は開業直後の6年前、「自分も国際派になろう!」と、英語のお勉強を「チラッと」やったことがありました。こう書くと「加納は英語ができるアピールをしている」と思われる方もおられるかもしれませんが、本当に「チラッ」とで、しゃべれないし、話せません。文章がようやく読めるくらい。慣れだね、あれ。

それにしても、いきなりスライド一面に英語の文章がびっしり出てきたときの絶望感といったら!あれ、わざわざ北海道から宿をとってまでしてきたから得意の「モッタイナイ」精神を発揮しましたが、東京近郊に住んでいたら「めんどくさそう」と帰っていたかもしれない。

ちなみに出席者名簿を少しだけ見たところ、地方の人も多かったですね。岐阜県や広島県、九州まで、広い地域からわざわざ東京まで集まっている様子。

 

脱線ばっかりで申し訳ありません。こんな感じで、講演は英語に溢れていたため、ここからお話しする内容も加納の意訳があるかもしれませんのであしからず。

 

講演ですが、開始早々、スライドには

 

「ミュータンス菌が多くても虫歯にならない人がいる」

 

という、業界的に衝撃的な一文が!

今年、当ブログでも「ミュータンス菌は、むし歯菌」と繰り返してきましたが、そのミュータンス菌が多くても、むし歯にならない場合がある、と。

それは一体、どういうこと?

 

Dr.ヤングは次のスライドにて、解答を提示。

「口腔内のPh(ペーハー)が下がると、病原菌が増加する」と。

 

これだけでは説明不足ですが、つまり口腔内のPhが下がることで、口腔内のバイオフィルムの恒常性が失われてしまう、と。

 

唾液のペーハーは「6.8~7.0」の弱酸性もしくは中性が保たれるようになっています。

食事をすると、その直後から口腔内の細菌がそれを「食べて」、酸を輩出する、という作業を行い始めるので、口の中の唾液のペーハーも下がります。でも、唾液の中にはペーハーを中性に戻そうとする成分もあるので、しばらくするとペーハーは中性に戻ります。

なお、数年前に、「食事した後、すぐに歯磨きするのは良くない」というトピックスが世間で話題になりましたが、それはこの食事直後の、どうしても口の中に酸が溢れる時間帯に歯ブラシでゴシゴシしてしまうことで、かえって歯が減ってしまうことになるのでは?というもの。

これ、なかなか説得力があって、歯科の先生にも納得する方も多かったのですが、その後、「それでは歯には問題は無い」とする見解も出ているので、現段階ではあまり気にし過ぎなくていいと思います。これについては何か進展がありましたら必ずご説明いたします。

ちなみに、歯の表面にあるエナメル質は、Ph5.5以下に下がると溶け始めますが、食後はこの数字以下までペーハーが下がることが多いです。

この時の下げ幅は、食べ物自体のPh(レモンなどは強い酸を持っている)などで変わるのですが、個人の体質などにも左右されるため、状況によって変化します。

 

ちょっと脱線しましたが、ヤング博士のいうところの「口腔内のペーハーが下がること(酸性になること)で、バイオフィルムの恒常性が失われてしまう」とは、ペーハーは下がると、口の中のバイオフィルムの性質が変化してしまう、ということ。

 

「バイオフィルム」という言葉も、今年、当ブログで何度も使用してまいりました。むし歯や歯周病は、「ミュータンス菌」や「ポルフィロモナス・ジンジバリス菌」(歯周病菌)といった細菌が単独で起こすのではなく、これらの菌が主導してはいるものの、病変は、バイオフィルムという細菌の集合体が共同して起こしています。

このバイオフィルムは個人によって全く性質が異なります。

今年の9月に参加した、日本病巣疾患研究会にて大阪大学歯学部の天野教授の講演において、一度形成された口腔内のバイオフィルムの細菌の組成(どの細菌がどのくらいいるか)は、ほとんど変化しない、と説明されていました。歯科医院での汚れ取りなどで細菌の数自体は減らすことはできても、固有のバイオフィルムをリセットすることには至らない、と。

つまり、一度、定着してしまったバイオフィルムは、大きく性質を変えることは困難、と。

 

ここでこの前までお話ししていた腸内フローラシンポジウムの様子を思い浮かべていただきたい。腸内細菌は母親から受け継がれ、生涯を通じて生息していく、と書きましたが、口腔内でも同じ、と言えるかもしれません。

 

ただ、口腔内細菌は、外部との直接接触の多い場所でもあるので、腸内細菌と同じ、とは言い切れません。

 

さて、話を戻しますが、それまで悪さをしていなかったバイオフィルムが、口腔内のペーハーが下がると、なんと酸を産生するようになってしまう、と。

 

講演では

「Phを下げると普通は良い性格の細菌が、酸性の中では発酵をするようになる。」

 

さらに

 

「良い性格のバイオフィルムでも、環境が変わると悪い性格になってしまう」と。

 

悪い性格になってしまったバイオフィルムは、乳酸、酢酸や酪酸、プロピオン酸といった酸を産生し、歯や歯ぐき、骨を溶かし始め、歯周病や虫歯を起こしていきます。

 

ここでまた、一か月前の腸内フローラシンポジウムの内容を思い出していただきたいと思います。

 

腸内細菌は、人が食事で摂取したものを腸で「発酵」して、短鎖脂肪酸を作り出し、人体や他の腸内細菌への「栄養」を作り出します。

この時の短鎖脂肪酸とは、乳酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸などなど。

 

これ、全て口腔内では歯や歯ぐき、骨を溶かしてしまう悪い成分になってしまうのです。

 

で、腸内は胃酸や大腸・小腸などからの酸の分泌により、酸性に保たれています。

酸性に保たれているから、「発酵」を行って、酸を産生し、人体に良い影響を与えている。

でも口腔内で「発酵」してしまうと、同じく酸を産生しても、人体に悪い影響を及ぼす。

 

 

つまり口腔内と腸内とでは、真逆になってしまうのです!

 

でも、「酸性の環境下では、細菌は発酵を始める」という事実は変わらない。人体の場所によって、必要とされる性質が異なるだけなのです。

 

この真逆な常識のため、歯科医と腸内フローラの研究者では、正反対の視点を持ってしまう。

 

シンポジウムでは、腸内では「嫌気性菌」が「善玉」とされていましたが、口腔内では「悪玉」です。同じく腸内では「好気性菌」が「悪玉」とされていましたが、口腔内では「善玉」(というか何もしない、というか)。

 

腸内フローラシンポジウムでは、「腸内細菌は必ずしも人体にとって「善玉」とは言えない」と、発表されていましたが、その通りです。口腔内では悪玉です。

腸内細菌の一つとして有名な「ラクトバシラス菌」は、口腔内ではキリで穴を開けるように、歯に鋭い虫歯を作ってしまいます。

 

 

ここはとても大事で、テレビなどでは「腸内細菌に良い」とされること(酢の摂取など)でも、口腔内では悪いこと、になってしまうので要注意です。

 

なんだか長くなってしまったので、続きます。

むし歯の予防管理プログラムを学んできました。

いよいよ雪景色となった札幌。皆さんも年末に向けて慌ただしくなりつつあると思われます。

そんな中、ですが、実は加納は先日の11月19日に、またもや東京に行ってまいりました。

腸内細菌のシンポジウム出席のために東京に行った(いわゆる上京)ばかりなのに。
それは19日に歯科メーカーのヨシダ社主催による「CAMBRA」という、う蝕予防管理に関するセミナーへの出席のため。

 

「CAMBRA」とは、「Caries Management By Risk Assessment」の略称で、平たく言えば「リスク評価に基づくう蝕管理」とのこと。

歯科関係以外の大多数の方にとっては全く平たくなっていませんね。(苦笑)。「英語で言うと、なんかカッコイイ感じがする」「難しい漢字とか表現の方が、スゴそうに思ってしまう」典型。

CAMBRAは、予防歯科の発達するアメリカで生まれたう蝕予防法とのこと。

アメリカをはじめ、欧州では確かに「予防歯科」が発達しています。

それは、アメリカでは医療自体が高価であるためであったり、欧州では国によっては全く医療を受けることができなかったり、症状に関係なく受けることのできる治療の回数が決まっていたり、成人の歯科治療が非常に高価であるため、う蝕にならないためにスンゴイ努力がなされているためです。北欧のある国では、成人になるまでは歯科治療は、ほぼ100%保険で受けることができますが、成人になると保険では一切、治療を受けることができません。些細な治療でウン万円、という事態も珍しくありません。

なので、水道水にフッ素を入れるまでして、「予防歯科」に力を入れているのです。

 

一見、よさそうに見えますが、決して「ベストな制度」というわけでもなく、手術の順番待ちだったり、保険制度を理由にどんなに痛くても治療してもらえない、という事態も起こり、問題になっています。

日本の保険制度はまだ柔軟性があると思うのですが、保険制度に関しては、どの国を見ても「ベスト」はなく、一長一短の問題を抱えているといえます。

一番のベストは、予防も取り入れつつ現実の症状にも対処できる制度かと思われますが、日本の保険制度はどちらかと言うと、「病気が起こってから」が対象になっているため、「未病」の段階での対処ができない状況にあるそうです。(医科、薬科、介護の分野の知識はないので断言できず)。

これは数年前に歯科医師会で招請した、糖尿病医の西田亙先生が嘆いていたことですが、糖尿病は「糖尿病」という診断が着く前の「予備軍」での対処が最も大事なのに、日本の現行の制度では「糖尿病になってから」しか、医者は関わることができない、とのこと。

この「予防」の分野に力を入れることは、問題となる医療費増加の抑制にも貢献できると思われます。

 

おっと、脱線してしまいましたが、上記の理由で、ほぼ日本以外の国々では「予防歯科」が重視されているのです。

 

で、この「予防」について、明確なリスクの評価を行い(本当に引き算的に評価していた)、それに応じた方法を提案しよう、というのがCAMBRA。(この説明で良いんだろうか)

 

なんでも「全米の歯科大学65校中、40校が採用している世界基準のう蝕管理方法」とのこと。

そのアメリカの予防管理法の中心的存在の一人である、パシフィック大学歯学部教授のDouglas A.Young博士が、来日し、直接講演する、というのが先日のセミナー。

わざわざアメリカから中心人物の先生が来日する、ということで、いってみよう、と思った次第。

 

正直、すごく期待していた、というわけではなかったのですが、これが実に「濃い」内容でした。

有料のセミナーのため、全てをお話しすることはできませんが、これからの虫歯予防の考えにも重要になると思われる点をお話ししてみます。

 

 

・・・・長くなったので次回から。

腸内細菌について学んできました。その9

今回も思わず長期になってしまいましたが、これで本当に最後。

最終回は、今の日本人の食に警鐘を鳴らす内容となります。

 

最後に取り上げる演目は「アジア人の食と健康のインターフェースとしての腸内フローラに向けて」。

 

研究チームは、日本、中国、台湾、タイ、インドネシア、フィリピンなどアジアの10か国において、アジア人の腸内フローラをしらネタ、とのこと。(「しらネタ」は「調べた」の入力ミスですが、なんだか笑っちゃうのでそのまま掲載)

 

以下、かなり大雑把な言い方になってしまうことをお許しください。

 

その調査結果ですが、日本などの東アジア、極東地域の小学生児童の腸内細菌ではビフィズス菌やバクテロイデス菌が多い、とのこと。一方、東南アジアの地域では「プレボテラ菌」が多い結果になった、とのこと。

このプレボテラ菌ですが、植物繊維を分解する酵素を持っています。

 

で、ですね、ビフィズス菌やバクテロイデス菌が多いと、脂質の代謝が盛んなんだそうです。つまり食事に脂質が多い。

 

え?なんで同じアジアでも、腸内フローラが異なるの?それに日本って、脂質が少ないんじゃないの?と、疑問に思ったところ、その違いは主食である「お米」にある、とのこと。

タイなどの東南アジアで食されているのは「インディカ米」、日本や中国、朝鮮半島などで食されているのは「ジャポニカ米」。

この二種類のお米の違いは、近年、糖尿病への影響もあって注目されています。

で、ですね、実はこの点、講演を聞いててなかなか分かりにくかったので、調べてみたのですが、ジャポニカ米の方がインディカ米よりも脂質が多いそうです。

 

また、日本人の腸内細菌は世界的にも特徴的だそうで、まず腸内細菌の種類が少ないそうです。調査した各国の中でもダントツに少ない、とのこと。また、日本人の腸内フローラではビフィズス菌が多い、とのこと。そして有害な菌とされる大腸菌が少ないそうです。

つまり日本人の腸内フローラは、世界でも珍しく健康的なんだそうです。

「その2」でもお話ししましたが、腸内細菌は先代から受け継がれていくもの。日本人の腸内細菌が特徴的、ということは、日本人が長い期間、その健康的な腸内細菌を代々受け継いできたから、と言えます。「日本食」の性格がわかりますね。

 

こうして古来より、ジャポニカ米を食べていたから、日本人の腸内フローラはビフィズス菌が優勢、と合点がいきそうですが、近年ではそれとは別に、ビフィズス菌やバクテロイデス菌が増加している、とのこと。

先ほど、お話ししたように、ビフィズス菌やバクテロイデス菌が多い、ということは、脂質の代謝が盛ん、ということですが、近年、食の西洋化に伴い、日本人の腸内フローラにも変化が表れている、とのこと。

 

ある例が提示されていました。

長年、アフリカに住んでいたアフリカ人たちが、アメリカに移住したところ、大腸がんが増えた、とのこと。これはアメリカの食に適応できるように腸内フローラが変化したため。

そして近年、日本でも「大腸がん」が増加しています。

つまり、食の西洋化によって、日本人の腸内フローラが変化しつつあるのです!

 

ここで追い打ちをかけるような、衝撃的な例が出されました。

実験マウスを2つわけ、片方のマウスには日本で1975年当時に食卓に並んでいた料理を食べさせ、もう一方のマウスには2005年当時の日本の食卓に並んでいた料理を食べさせたそうです。

すると、1975年の日本の家庭料理を食べたマウスは長生きしたのに対し、2005年の日本の家庭料理を食べたマウスは早死してしまった、とのこと。

 

もちろん、マウスと人間では、同じ結果になる、とは言えません。

 

 

昨年、歯科医師会で招請した岡崎先生の講演では、現在の日本の家庭料理が「噛むこと」を軽視していることを問題視されていましたが、腸内フローラの観点でも、問題が現れているようです。

 

これは質問時間でのお話しですが、日本では小学校卒業と同時に、腸内フローラが変化してしまう、とのこと。

これは小学校の給食によって、腸内細菌が良くコントロールされているからではないか、と指摘され、給食の献立を考案している栄養士さんや担当の方を称賛していました。

確かに、今、アメリカでは小学校の給食の栄養バランスの悪さやファーストフード化が日本でも知られてきていますね。

 

我々は、もっと日本の小学校の給食について、見直さなくてはならないかもしれない。

 

給食に関しても、岡崎先生は「噛む」という点で、問題視しておられました。

 

 

現在、教育の無償化など、子育て分野に関して政治の関心があつまっていますが、日本古来の「噛む事」や「腸内細菌」を子供や後世に受け継ぎ、食の欧米化にともなう健康被害から子供たちを守るためにも、小学校の給食も、重視されるべきかもしれません。

 

 

子供達の腸内細菌を健全に育成するために、自分も歯科医の立場からできることをやってみよう、と思いました。

 

 

 

本当は講演はもっと続いていたのですが、スケジュールの関係でここで退席いたしました。

 

全くの異分野ではありますが、とても勉強になりましたし、自分の歯科医としての今後の指針についても、有意義なものとなりました。これからも機会があれば、様々な異分野の講演会やシンポジウムに参加してみようと思います。

 

今回のご報告は、以上です。

 

 

 

 

*発表された方々、関係の方々へ

もし発表主旨が異なる場合、明らかに間違っている場合、掲載が好ましくない場合などありましたら、即刻、訂正・削除いたしますので、お知らせいただけましたら幸いに思います。

腸内細菌について学んできました。その8

さて、午後の講演は続いていたのですが、次はお母さん方も関心が高いであろう、授乳についての内容となります。

 

4講目は「ヒトミルクオリゴ糖とその分解酵素から考える母乳栄養児とビフィズス菌の共生・共進化」という演題。

 

論旨集の導入部分に、

 

「母乳栄養児の腸管では授乳開始直後からビフィズス菌が速やかに増殖し、いわゆるビフィズスフローラが形成されることが広く知られていた。」

 

とあります。

この講演では、世間でも有名なビフィズス菌が頻繁に登場します。

このビフィズス菌ですが、出産後、赤ちゃんに授乳を開始すると、腸内で増加するそうです。しかし離乳の開始とともに減少してしまう、とのこと。

そして固定食の開始とともに、今度はバクテロイデス菌が増えてくる、とのこと。

 

つまり有名なビフィズス菌は、授乳でしか増加しない、と。

 

なんでそうなのか?というと、それは乳汁の成分の中で3番目に多い「ミルクオリゴ糖」に原因がある、とのこと。

このヒトミルクオリゴ糖(以下、論旨集にある表現に則って「ヒト母乳オリゴ糖」とする)ですが、なんとヒトの、つまりは赤ちゃんの栄養にはならないのです!

赤ちゃんの栄養にならないのに、なんで3番目に多い量が作られているのか?

3番目に多い量、となると、その生産のために、非常に大きいエネルギー量が乳腺で使用されている、とのこと。

なんでそんなことをしてまで、母親はヒト母乳オリゴ糖を作らなければならないのか?

 

 

このヒト母乳オリゴ糖は、赤ちゃんの栄養にはなりませんが、赤ちゃんの腸内細菌、特に赤ちゃんの時期に優勢となっているビフィズス菌の栄養源になっているのだそうです。

つまり母親は、赤ちゃんの腸内細菌の栄養まで、提供していることになる!

ちなみにヒト母乳オリゴ糖は、1型糖鎖構造(Galβ1-3GlcNAcβ-OR)を有するオリゴ糖を多量に含んでいるそうですが、これは人類だけで、類人猿を含む他の哺乳類は2型糖鎖構造(Galβ1-4GlcNAcβ-OR)の割合が高い、とのこと。(一応、化学式を書いたけども、普通に暮らしていくうえでは全く必要にならないので、飛ばしても構いません。この分野のマニアになりたい、という、風変りな方は専門書をご覧ください)

つまりヒト母乳オリゴ糖の成分は、生物の中でも唯一、ヒトだけが作り出すことができる、とのこと。
そしてこのヒト母乳オリゴ糖を赤ちゃんの腸内に生息するビフィズス菌が食べるのですが、ビフィズス菌の中でも役割分担がある、とのこと。

 

一口に「ビフィズス菌」と言っても、たくさん種類があるんですよ。

 

細菌は、上から(大雑把なほうから)「門」「網」「亜網」「目」「科」「属」「種」へと、だんだん細かく分類されていくのですが、「ビフィズス」というのは、ビフィドバクテリウム「目」ビフィドバクテリウム「科」の細菌の総称を指すのだそうです(違ってたらごめんなさい)。「科」ということは、その下に「属」もあるので、すると種類も変わるし、同じ「目」あるいは「科」でも、「属」が違えば性質も変わってしまいます。
ヒトだって、モンゴロイドとかコーカソイドとかって、あるでしょ?

ちなみに歯科で「虫歯菌」としておなじみの「ミュータンス菌」ですが、歯学部の授業なんかでは「ストレプトコッカス・ミュータンス」として覚えさせられます。「ミュータンス」は「種」名です。

「ストレプトコッカス・ミュータンス」は虫歯を起こす中心となる菌ですが、同じ「ストレプトコッカス・pneumoniae」となると肺炎球菌として知られていますし、「ストレプトコッカス・pyogenes」は溶連菌として、お母さん方でもご存知の方も多いと思います。

つまり、下方の種類が異なれば、違う細菌になる、と。人間でも親戚は顔が似てても性格やなんかは異なりますしね。

 

 

ちょっと遠回りが過ぎましたが、この「ビフィズス菌」の中の「Bifidobacterium bifidum」は、腸内にやってきたヒト母乳オリゴ糖をちぎって外に置いておき、貯めておく。そしてすこしづつ食べていく、とのこと。また同じ「ビフィズス菌」の中の「bifidobacterium bifidum」は、その外に貯めてあるヒト母乳オリゴ糖を分解して、他のビフィズス菌の仲間たちに分配している、とのこと!

なんと、一族の中で共同して生活している!!!

 

つまり、生まれたばかりの赤ちゃんという「フロンティア」に最初に「入植」してくるのがビフィズス菌で、彼らはまだ成熟していない、エサの少ない環境で一族が支えあって生活し、徐々に数を増やし、そして授乳の終了とともに、他の多くの細菌たちにその場を譲り渡す、まさに「開拓の先駆者」のような存在!(説明が違っていたらごめんなさい)

 

このビフィズス菌ですが、経膣分娩にて、母親の菌が赤ちゃんに受け継がれるのですが、帝王切開だと受け継ぐことができず、赤ちゃんの腸内は無菌の状態となります。

また、人工乳を使用すると「開拓者」であるビフィズス菌を増やすことが難しい。

これらはシンポジウムで繰り返されていたことです。

 

*お断り

シンポジウムにおいて、経腟分娩と母乳による授乳の重要性が指摘されていたのは事実で、それを避けることはできない、と思いました。ただ、自分は歯科医ですので、経腟分娩・授乳の場合とそれ以外との違い、までは言及できません。ここから先は専門医の意見に従うことをお勧めします。

 

 

 

さて、ここからちょっと、シンポジウムの内容を離れるのですが、夏ころ、当ブログで「糖」について、と題した記事をいくつか掲載いたしました。

その中で「ラクトース」について説明しましたが、グルコースとガラクトースがくっついた「二糖」とあります。

このラクトースは、上記のヒトミルクオリゴ糖と異なり、腸内細菌の食糧とはならずに、そのまま赤ちゃんの栄養となります。

母乳にはこのほか、赤ちゃんの免疫となるラクトフェリンや、初乳に含まれる「分泌型IgA」も細菌やウイルスを守る成分として赤ちゃんに与えられます。

母乳は、赤ちゃんに栄養を与えるどころか、赤ちゃんの腸内にいる「生涯のトモダチ」のお世話までしているんだ、と感心してしまいました。

 

 

 

追記
午後の講演の中で、ある演目の後の質問の時間の際に、ある著名な研究者の方が演者に対し、「あなたはちゃんと母親の肛門にも注目しているのか?!」と、とてもするどい口調で質問されておられました。(赤ちゃんに母親の腸内細菌が受け継がれる、ということは、母親の腸内や肛門の細菌や状態が赤ちゃんに受け継がれる、ということ)  演者の方は「母親の肛門の重要性は認識している」と回答。それに対しても質問者は「赤ちゃんの腸内細菌には、母親の肛門の細菌も詳細に調べる必要がある!」という主旨の質問を、強い調子で繰り返しておられました。
結局、そのあと10分間ほど、会場では「母親の肛門」という単語が頻繁に飛び交い、「肛門」に関する非常に活発な議論が展開されました。

自分はこの議論に深い感銘を受け、「東京・鴻門の会」として、長く後世に語り継ぐことをケツ意した次第。お粗末!!

 

 

・・・最後はふざけてしまいましたが、今振り返ってみると、母親の体は、全て子供を守るためにできているんだなあ、と、ほのかに感動してしまいました。健康に生まれて、健康に育つ、って、「細菌レベル」で奇跡的なことなんですね。